屋上小説

Posted on 2013-02-01
屋上読み物 The Word「駅太郎のひとりごと」

駅太郎のひとりごと
文 ● 早川 智之
絵 ● 若杉 美保子

子どもたちが電車に乗って学習塾に行く。
駅太郎は白濁した眼球で彼らを眺める。

駅太郎は駅に住む。
背の高い男の子に「臭ぇオヤジだな」と笑われた。
どうやら小学生らしいと知って驚いた。

俺が子どもの頃は日が暮れるまで
トンボを追ったもんだがなぁ。
塾ってのは楽しいものなのかね。幸せなのかね。
あんな青白い顔をしてさ・・・。

しかし義憤めいたその感覚も、すぐに消え去った。
まったく、この糞ったれの世の中には
どれだけ考えても、どれだけ頑張っても
どうにもならないことがありすぎるのだ。

今夜も駅太郎は回転寿司店のゴミ捨て場に
夕食を探しに行く。

偉い政治家の先生にも、どんな金持ちにも
あの子ひとりを救えやしねえんだ。
みんな俺と何も変わりゃしねえのさ。

<了>

早川 智之 tomoyuki hayakawa コピーライター・屋上小説家
1973年神奈川県生まれ。デザイン系の専門学校を中退した後、デザイン事務所に就職。しかし社長とソリが合わず退職。あえなくフリーター生活に突入する。そして10年ほど前「学費の元を取る」という意気込みで、広告関連の会社に再就職。ここでも社長とソリがあわないが、少し大人になっていたため我慢できた。やがて課長のポストにまで登りつめ、年収600万円というゴールドマンサックスの子会社の取引先ばりの高所得を得るが、その地位に甘んずることなく独立。独立といっても、先輩が設立した(株)引力デザインで働く平社員であり、またも社長とソリが合わないという憂き目にあっている。
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若杉 美保子 mihoko wakasugi イラストレーター
1981年愛知県生まれ。武蔵野美術大学造形学部視覚伝達デザイン学科卒・パレットクラブスクール・イラストコース8期生修了。大学卒業後デザイン会社勤務、2009年よりイラストレーターとしての活動を開始。愛知県を中心に雑誌、ポスター、DM、フリーペーパーなどを中心に描かせていただいております。
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