インタビュー / CONTENTS

Posted on 2013-02-01
MASH〈歌うたい〉/ 屋上インタビュー完全版 vol.18

屋上で見た奇麗な『いちばん星』。そして、聴いた『いちばん星』。
んっ、屋上で聴いた…?まぁ、そう思いますよね。でも、良いんです。
聴いてみるんです『いちばん星』を!だって、今回は新曲『いちばん星』を
めでたく配信リリースしたMASHさんのインタビューなんですから。
もちろん、内容は音楽ではなく屋上がメインですけど(笑)。ただ、最初に一言だけ言わせてください。
忙しい日々の追われて大切な何か忘れかけているかもしれないそこのアナタ。
是非『いちばん星』を素直な気持ちで聴いてみてください。
何かが変わるかもしれませんよ。僕はそんな気がします。

Interview&Text ● 水野 桂助
Photos ● 堀江 浩彰

屋上に何か思い出ってありますか(笑)?

MASH:屋上で『光り輝く明日へ』って曲のMV(ミュージックビデオ)を撮ったことがありますよ。

そうなんですか!? どうして屋上で?

MASH:MVって今じゃYOUTUBEで観れるじゃないですか。だから外国からのアクセスも意識して、日本の夏満載のビデオを撮りたかったんです。それで日本の夏と言えば花火。で、花火が一番見えそうな場所はどこだ?って考えたら、屋上じゃないかなって。

実際に行ってみてどうでしたか?

MASH:撮影したのがある大学の屋上だったんですけど、スゴく印象に残ってます。風が強くて、太陽が近くて。普段、いかないから場所だからですかね。僕にとっては特別な場所になりました。

普段、いかないんですね…。実際のところ、インタビューをしていて、よく屋上に行く人よ!って言う人の方は稀ですけどね(笑)。

MASH:(笑)。でも、イメージ的に学校の屋上といったら、やっぱりタバコを吸ったりとか…。

え、屋上で吸えました?

MASH:いや、屋上には行けなかったです。鍵が閉まってて(笑)。

やっぱり…。学校の屋上=タバコって人、なぜか多いんですよ、実際は吸ってないのに。漫画とかのイメージだと思うんですけど。

MASH:『ろくでなしブルース』とか(笑)。

まさに(笑)。では、MASHさんにとって屋上ってどんな場所ですか?

MASH:うーん、空に近い場所。そして心が素直になれる場所。僕は地下に潜ると、心が窮屈に感じる。あと、僕はどこまでも高望みをする人間なんで、高い場所に憧れがあるんです。だから、空を飛んでる鳥なんかにも自分を重ねるし。極力、下をみてる歌より、僕の歌を聴いた人の視線をほんの少しでも上げる歌を書いていきたいし。

『いちばん星』もそうしたくなる曲ですよね。

MASH:そう感じてくれると嬉しいです。

僕はこの曲を聴いて、この曲みたいな状況の人って世の中にはスゴくいるだろうなって感じたんです。僕は、10年前の夢ってなんだったっけ?って状態でだったんですけど……。

MASH:ですよね。本当にこういった状況の人ってたくさんいると思う。

やっぱり、そういった状況の人に是非、聴いてもらいたい?

MASH:そういう思いはありますね。この曲は、若い頃は夢を追っていたんだけど、今は現実と向き合ってって、キレイごとだけでは成り立たない所で毎日を過ごしている人たちに『君だけじゃないよ、そういう気持で日々を過ごしているのは。僕も同じだよ』ってことを伝えたかったんです。ただ、伝えるだけ。今までは『こうした方がいいよ』とか『元気出していこうぜ』みたいにポジティブに元気づける曲が多かった気がするんですけど、今回は何ていうんだろう?寄り添うというか、優しく一緒に並走するイメージですね。この曲では特に『ああした方が良い。こうした方が良い』とは言わずに、問いかけるだけ。『輝いているかい?』とかね。この曲の場合、聴いてくれた人がこの問いかけについて、どう感じてもらえるかなんです。

確かに『そうだよな、もう少し頑張ってみよう』って思う人もいれば『うるさい、ほっといてくれ』って思う人もいるでしょうし。本当に老若男女で色々な感じ方をされる曲だなって感じました。

MASH:そうですよね。きっと色んな感じ方があると思います。でもうるさいほっといてくれよって、気持ちともう一回やってみようって気持ちは実は背中合わせの感情だと思う。

確かにそんな気がします。ちなみに、この曲はご自身の体験談?

MASH:ほぼ、そうですね。これは去年、事務所を辞めた時に感じたことを曲にしたんですよね。辞めた時に、きっと世の中の人も会社が無くなったり、学校を辞めなくてはいけなくなったり…。ついに僕も人並に辛い体験をしたな。って考えたら、この思いは、きっと歌にしないといけないって感じたんです。あの辛かった時に感じたことを!それもあって僕、この曲の歌入れをしている時、気づいたら泣いてましたもん(笑)。レコーディングで泣いたのは初めての経験でしたね。

基本的に書く歌詞は体験談が多いんですか?

MASH:ええ。きっと半分くらいかな。

では、かなり赤裸々にさらけ出している感じですね。

MASH:うん、だから、歌詞を書くときは毎回、色々な恐怖心との戦い。

恐怖心とは?

MASH:なんだろう、自分の経験を歌詞にして、世に出すことで、僕の周りの人間を傷つけることにはならないだろうか?とか、こんなことを歌ってしまって叩かれないか?とか。歌手や物をつくる人の周りにも、みんなと同じように自分の生きてる社会がある。あとは単純に自分のことをここまで、さらけ出す必要があるのか?とか。まあ、表現する本人が恐怖や痛みを感じない作品はあんまりよくないですよ。

なるほど。

MASH:だから大抵、曲が完成すると世に出そうか出さないどこうか、すごく迷いますね。
ただ、この迷いを感じる曲と感じない曲のどちらかをリリースするとしたら、結局は、迷いを感じる曲を出すんですけどね。

それは何故?

MASH:迷いがないということは、自分に正直になれていないというか……本当に僕が歌いたい歌じゃない気がするんですよね。自分さえも揺さぶれないような曲は、僕が歌わなくてもいいんじゃないかなって。僕は僕にしか歌えない曲を歌っていきたい。

失礼に感じてしまうかもしれませんが、本当に色々と考えているんですね。

MASH:うん、馬鹿なりに(笑)。

ちなみに、歌を通して一貫して伝えていきたいことってあったりしますか?

MASH:うーん、漠然とですが、僕が弱い人間なので、弱い人間の立場にたって色々と辛いこともあるけど『それでも』生きていこうぜ。『それでも』笑っていこうぜ!って思いを伝えたいって気持ちはありますね。なんだろう『それでも』って部分に希望がある気がする。前向きに生きるって言うのは、僕は未来に向かっていくうえで絶対必要な感情だと思う。

プラス思考って大事ですよね。それでは最後に、この先の夢や目標について教えてもらえますか?

MASH:夢は、もっと良い歌に出会いたい。僕の毎日を輝かしてくれる音楽や映画、小説、そして人に出会いたい。あと近くにいる人たちをまずは笑わせたい。

では目標は?

MASH:目標かぁ…。いまアルバムを書いてます。生活の匂いがする良い歌ができてきてますよ。それをみんなに届ける。そして、もし、少しでも僕の歌に力があるのなら『見えない力』みたいものに揺さぶりをかけたていきたいです。

『見えない力』?

MASH:はい、今の世の中ってマスコミのメディア戦略に乗せられて、知らぬ間に自分の考えを扇動されていることってたくさんある気がするんです。テレビだけに限らず、気づいたら『これが正しい!』みたいな感覚になってしまう。必要悪、というか仮想敵みたいなのを作ることで世のなかはうまくいくときもあるでしょ。そういう危険思想を実行する力というか価値観に揺さぶりをかけたい。戦争にいちばん強い国が一番正しいなんて限らないじゃない。教科書に載ってることがすべてじゃないし。TVのニュースも大切だけど、僕らの住んでる街で起こる小さな幸せは中々TVじゃ流れないわけですよ。だから、すべてを鵜のみにしないで自分で選んで、考えて少しの勇気をもって言葉を発信していきたい。人は他者に何らかの影響を与えながらしか生きれないんだから。ほんと、すごい時代ですよ。誰もがメッセンジャーになれるんだから。

なんとなく分かるような気がします。

MASH:せっかく大声で歌える場所にいるのならそれぐらいの使命感を、そろそろ少しは持ちたいなと33歳にしてようやく(笑)。

めちゃくちゃ壮大じゃないですか。

MASH:そう考える自由が僕にはあるし。

僕にも一応メッセンジャーになれる権利が(笑)。ということで、今日は本当にありがとうございました。これからもいい曲を作っていってください。

MASH:ありがとう。じゃあ今から屋上で煙草でも吸ってきます。あ、禁煙してたんだった(笑)。

MASH
名古屋在住の歌うたい。ラップ歌手。2001年に地元名古屋で、HIP HOPバンド「ASIAN PIMPS」を結成。2006年「ASIAN PIMPS」が解散。同年11月にミニアルバム「情熱のばか」をリリースするとともにソロデビュー。USENチャートを賑わした「稲穂」「僕がいた」「夢追いの地図をひろげて」やアニメのテーマソングに「Boys~光り輝く明日へ~」が起用されるなど精力的に楽曲をリリース。現在までに、「よろしくマイハート」「ボロボロのスニーカーとFREEDOM」「若者」「光とかげ」など、フルアルバムを4枚をリリースするとともに、ワンマンライブ「MASH HOUR」の主宰や、ロックフェス等への参加も積極的に行い多方面からの支持を得る。自他共に認めるライブアーティストであり、ときに1マイク+1DJで、ときにバックバンドを率いての熱いパフォーマンスは必見。未来に発信する、ニュータイプメッセンジャー。2013年、前作「光とかげ」から1年3か月ぶりの新曲「いちばん星」が2月20日から配信スタート。そして、その曲は、cross fmの2013年official GREEN campaign songに決定。2013年、秋にアルバム発売予定。

WEB→ http://mash-hour.com/

水野 桂助 keisuke mizuno ライター・プレス
1978年愛知県生まれ。relaxみたいな雰囲気のフリーペーパーを創りたい!とそそのかされ、渋谷直角さんのようなインタビュアーが必要だ!と焚き付けられ、巻頭インタビューは雑誌の華だ!とプレッシャーをかけられ、毎号巻頭インタビューを担当する遊びと子育ての両立に悩む1児の父。事務所先輩はじまりの様々なご縁を経て、屋上とそらfreeに最重要ポジションで参加中。帰りたがらない編集長とアートディレクターに挟まれる辛い日々を「みんなで楽しく!」をモットーに乗り切り中。
> twitter @mizu227

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